不正咬合は予防できる!!子どもの口腔発達の背景を考える

by inoueshika on 4月 22, 2022

テーマ:不正咬合は予防できる!!子どもの口腔発達の背景を考える
講師:元開 富士雄 先生(げんかい歯科医院 院長)     
受講日:令和4年4月10日
場所:京都テルサ テルサホール

レポート:東岡 友紀(歯科衛生士)

今回講師をしていただいた元開先生は長きにわたり口腔機能の発達に携わっておられその第一線を走ってこられた方です。講演内容は口腔機能発達の基本的な知識を用いての原理や原則のお話から始まり、口腔機能の成り立ちから発達、自立離乳の考え、更に先生の長きにわたって実践してこられた臨床経験やその方法論までと多岐にわたりました。

私が今回学ばせていただいた中で特に興味深かったリズム運動と口腔機能発達の関わりについて一部抜粋して書かせていただきます。口腔機能は多要素から成り立っていて、個々の要素が協調してシステム化する事により多くの機能を使いこなす事ができるそうです。また構成要素各部位の筋肉のリズム運動が、それぞれシンクロすることで機能のシステムが上手く働くようになるそうです。そして発達の段階で上手くリズム運動を養えなかった子供さんに対しては、パタカ運動やガムトレーニング、グーパー運動を使っての訓練など多岐にわたる方法を教えて頂きました。

リズム運動の発達につまずいてしまうと、身体の様々な領域まで発達が崩れてしまうそうです。そこでふと感じたのですが、運動神経が悪い人はリズム感が無いとよく耳にする事がありませんか?

リズム運動の発達不足が運動神経の発育にまで影響をもたらしている、それ位口腔機能は様々な構成要素が上手いバランスで成り立っているという事に驚かされました。早ければ授乳時の吸啜運動からリズム運動を養う事が関わってくるそうです。その他にも新生児期から様々な面でリズム運動を養う機会がありますが、なるべく早期の段階でそのような知識をお母さん達が知るのはとても大事になってきます。

私達歯科で働く人間はお腹の中にまだ赤ちゃんがいる段階からお母さん達にアドバイスや様々な知識を伝えることが出来る数少ない職種だと思います。その機会を逃すことの無いよう大事にしていきたいと思いました。そして、元開先生が仰っておられたように無限にある発達パターンに柔軟に対応出来るように様々な知識を吸収していきたいと思います。
 


レポート:吉田 光代(歯科アシスタント)

「発達とは、受精から死に至るまでの時間軸の中で、人間の心身や運動・行動が量的・質的に変化していく過程である」という発達の基本的な知識から始まった元開先生の講演は、歯科という分野だけではなく、発達心理学や遺伝子構造など色々な分野らかの視点を踏まえてのお話で、とてもスケールが大きかったように思います。

機能とは未来を見て行動していることであり、その機能の不自然さや子ども達の発達に必ずある誤差をしっかり見ていく為に、私たちは見る目を持ち子ども達の不安要因を言動に注意し取ってあげること、そして治療をやらせるのではなく自発的に行動し治療させるように誘導していくことの重要性が大事だと改めて感じました。

口腔機能とは多要素と多機能からなり、軟口蓋と咽頭蓋の2つの弁の開閉により瞬時に意識運動・無意識運動に切り替わり、その運動は未来を予測して準備された運動であることや、胎児から新生児では屈曲による安定姿勢が体幹の安定をもたらし四肢だけでなく、呼吸や顎顔面の運動・哺乳嚥下を促進すること、3ヶ月ごろからのうつ伏せ姿勢の肩甲帯の安定による支える力が、下顎運動や舌運動に影響があること、そして胎内における神経成熟の差は出生後も継続し、舌運動に大きな影響を与えるなど、歯が生えるかなり前の時期がいかに成長発育の過程に大事かを教わりました。

離乳食の摂取の仕方で摂取機能の発達は自然と獲得され、子供が自分から食べようとする自発運動の必要性のお話の際には、自分の息子が6ヶ月ごろの時にキッチンの下に置いてある大根や白菜などに興味を持ち、大きな口を開けてかぶりついていたのを思い出しました。機能の発達には経験が必要であり、柔軟性とリズム性が大事だという事をわすれず、今後のアシスタント業務に携わっていきたいと思います。

元開先生の「親の役割とは、生活基盤と社会基盤をどれだけみせるか」という言葉と、先生が紹介してくださった小西先生の子どもの自発運動について「もう少し子どもの自分で伸びようとする力を信じても良いのではないかと思う」という言葉は、私自身の子育てに大きく残る言葉となりました。